Eテレ(NHK教育テレビ)の番組、『100分de名著』
毎週水曜日の夜と、あと2回くらい再放送している番組。
名著と言われている本、ひとりで読み解くのはちょっとむずかしいかも~という本を、
25分×4回の放送で読み解く番組。
進行役はアナウンサーの武内陶子さんとタレントの伊集院光さん。
加えて、その著者に詳しい指南役の先生の3人。
伊集院さん、質問が的確で、
そうそう!そこ聞いてほしいところ!
というのを聞いてくださったり、わかりやす~いような例をあててくださったり。
さらに、寸劇とかアニメーションとかがまざっているから、とてもわかりやすいんです。
わたしこの番組好きで、
録画して観ては、一時停止ボタンを駆使してノートにメモしたりして、
ちょっと賢くなった気分にひたっているのですが、
今回の名著は、
A.アドラーの『人生の意味の心理学』
名著51 アドラー「人生の意味の心理学」:100分 de 名著
A.アドラー、心理学者。
最近流行りの。
本屋さんとかに行くと、A.アドラーの関連本がずら~っと並んでいるのを目にした人もいるかと思います。
わたしも、名前は知っていたしその光景は目にしたことがあったけれど、
いまいち手に取る気は起きずにスルーしてしまっていた人。
心理学者と言えば、フロイトとかユングとかが有名だと思いますが、
A.アドラーは、その二人と並ぶ、“心理学の三大巨頭”と言われているそう。
「人生はいつでも変えられる」
「誰もが幸福になれる」
「世界はシンプルだ」
などなど。
新興宗教?
と思ってしまうような文句がならんでいて、
な~んかうさんくさいな~と思っていたのも、読んでみようと思わなかった理由のひとつだったかもしれません。
でも今回、100分de名著がそのアドラー。
せっかくの機会だし、観てみよう、ということで観てみました。
指南役は、哲学者でカウンセラーの岸見一郎さん。
アドラー心理学の第一人者。
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岸見先生曰く
「アドラーを知れば、人生が変わる」
「個人の人生はもとより世界が変わる」
らしい。
■アドラー心理学の誕生
A.アドラー(1870~1937)
・オーストラリアの裕福なユダヤ人家庭の生まれ
・幼いころの病気で自由に体を動かすことができず、健康な兄に劣等感を抱いていた
・病を克服し、医師に
・開業した病院は、有名な遊園地の近く
・大道芸人など、体を武器にする芸者たちが通うようになる
・肉体を武器にする彼らのほとんどは幼いころは体が弱かったことを知る
・身体的ハンディキャップはそこから生じるマイナスを何かでおぎなおうとする、それはなんらかの形で性格や行動に影響を与えているのではないか
・「劣等感」の力に着目
・心理学の道へ
・フロイトの勉強会に参加し、共に研究するように
・第一次世界大戦では精神科医として従軍
・多くの負傷者を診断する中で独自の心理学を築いていった
□アドラーとフロイト
学説の違いから決別。
フロイト:“リビドー(性的欲動)”が人間のパーソナリティの基礎
アドラー:リビドーではなく“劣等感”
□“劣等感”への着目
“劣等感”は人生に立ち向かう力も生み出す
という風に考え、アドラーはその力に着目した。
□戦争体験を経て
フロイト:人間はなぜ闘うのか、人間には攻撃欲求があるからだ
アドラー:この姿は本来の人間の姿ではない、人間は仲間である
仕方ない、で終わらない。
“これからどうするか”を考えていく。
□安土羅診療所(安土羅先生と訪問者の寸劇)
安土羅診療所のチラシ、『人は変われる』『世界はシンプルである』『誰もが幸福になれる』と記載されているもの、を突き出して、
女子高生「『人は変われる』『世界はシンプルである』『誰もが幸福になれる』なんて、あまりにもふざけていると思って。社会も人間ももっと複雑なものだと思います」
安土羅先生「世界が複雑なのではなく、あなたが世界を複雑にしているとしたらどうでしょう。問題は世界が複雑かどうかなのではなく、あなた自身がどうかということなのですけどね」
「人は客観的な世界ではなく、自らが意味づけをした主観的な世界に住んでいる」byアドラー
ひきこもっているお兄ちゃんの話
女子高生「いじめとか受験の記憶とかいろんな理由があって外の世界に出られないでいるの。それなりの原因があるんだから」
安土羅先生「あらゆる結果の前に原因があるという考え方がおかしい。
過去の原因からではなく、今の目的から考えることだ。
お兄さんは、不安だから外に出られないのではなく、外に出たくないから不安という感情をつくりだしているのではないのかな。
人生はすべてあなたが決めているのですから」
□今の寸劇でのキーワード
1. 意味づけを変えれば未来は変えられる
→“みんなが同じ世界に生きている”と思ってしまう。
しかしそうではなく、それぞれの人が“自分が意味づけした世界”に生きている。
同じ体験をしても、感じ方は人によって異なる。
“意味づけ”によって世界は全く変わってくる。
我々が過去の経験にどのような意味を与えるかによって、自分の生を決定している。
トラウマは、それが自分の人生に大きな影響を与えた出来事だと意味づけをしているだけ。
2. 原因ではなく目的に目を向けよ
“目的”が自分の人生をつくっている。
未来は自分で決めていける。
■ライフスタイルとは
・自分のことを自分がどう見ているか(自己概念)
・他者を含む世界の現状についてどう思っているか(世界像)
・自分および世界についてどんな理想を抱いているか(自己理想)
一般には、“性格”という言葉で表現されているもの。
しかし“性格”という言葉は、持って生まれたもの、変えにくいというイメージがつきまとうため、あえて“ライフスタイル”という言葉を使っている。
“ライフスタイル”はいつでも、今この瞬間にでも変えることはできる、
しかし我々は“ライフスタイル”を変えない決心をしているのだ。
とアドラーは言っている。
□“ライフスタイル”を変えるためには、
1. ライフスタイルを意識化する
2. どんなライフスタイルに変えていけばいいかを知る
「3日あれば人間は変われる」
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ずばり、劣等感。
■劣等感とは
今より優れた存在になりたいと思って生きている人間のあり方=“優越性の追求”
「すべての人を動機づけ、
われわれが、われわれの文化へなす
あらゆる貢献の源泉は、優越性の追求である。
人間の生活の全体は
この活動の太い線に沿って
すなわち、下から上へ、マイナスからプラスへ、
敗北から勝利へと進行する」byアドラー
“優越性の追求”≠“劣等感”
うまくつかえば生命の原動力になる。
劣等感は“思い込み”かもしれない。
身長も年収も、他者との比較の中で生まれた主観。
劣等感を持つには目的がある。
劣等感に苛まれて自分のことが好きになれないという人は、そういう自分をあえて選んでいる。
自分のことを好きになり自信を持ってしまうと、対人関係の中に入っていかなくてはならなくなる。
人と関わると傷つくこともあるから、そこを避けるために劣等感をつくりだしている。
ここでいう劣等感は、他者との比較ではなく、自分の中の問題。
理想の自分と現実の自分とのギャップ=劣等感
■過度な劣等感、劣等コンプレックス
他者との比較で生まれる劣等感
AであるからBできない
例:不細工だから、彼女ができない
AとBに因果関係はないのに。
=見かけの因果律
劣等コンプレックスとは、見かけの因果律を立てて、人生の課題から逃げようとすること。
■過度な優越感、優越コンプレックス
・自分を実際よりも優れているように見せようとする
(学歴を誇示する人、高価なブランド品を持ち歩く人、過去の自慢話ばかりする人)
・他者からどう見られているかを非常に気にする
・自分で自分についての理想を高くしようとする
(自分に価値があると思いたい人、高い目標に向かっている自分自身に酔いたい人)
優越コンプレックスは、劣等コンプレックスの裏返し。
自分より下に人間をつくることで、自分はその人より上にいると思い安心する。
(いじめ、上司が部下に対する侮辱など)
劣等コンプレックス、優越コンプレックスから抜け出すには、
普通であることの勇気を持つ。
特別よくなろうとしなくていい、特別悪くなろうとしなくていい、
ありのままの自分からはじめよう、ということ。
他人と比べずに自分の能力をあげようとするには、
縦ではなく、平面を歩いているイメージを持つ。
ある人は前を歩いていて、ある人は後ろを歩いているというイメージ。
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人間の悩みはすべて“対人関係の悩み”である。
死は愛する人との別れ、と思うと対人関係。
孤独も他者がいればこそ思うこと。
■対人関係の悩みの一例
すべての行動には相手役がいる。
相手役を敵だと思う人の多くは、自分は世界の中心にいるという考えを持っている。
典型的なケースが広場恐怖症。
家にひきこもって外に出られない神経症の一種。
みんなから見られることを怖れているように見えるが、
実はその逆で、みんなから注目されて世界の中心でいたいと思っている。
外に出てしまうと、自分が多数の中の一人でしかなくなってしまう。
それを怖れて外にでないようになってしまう。
そんな人の多くは、幼いころ甘やかせて育てられた。
他者が自分に対して何をしてくれるかにだけ注目する大人に育ってしまう。
いつも注目されたい人間に育ってしまう。
■承認欲求とは
承認欲求が強くなった理由のひとつは賞罰教育。
ゴミを拾うとき、誰かが見ていてくれていたら拾うが、誰も見ていなければ素通りする小学生。
褒めて育てても、叱って育てても、
これからする行為が適切か自分で判断できない子になってしまう。
顔色をうかがって、叱られそうだったらやらないし、褒められそうだったらやりたくなくてもやるようになる。
承認欲求が強い人は、子育ても介護も大変になってしまう。
人生は、生きること全般はギブ&ギブだと思うこと。
自分の行為の価値が自分でわかるため、承認されなくてもよくなる。
■課題の分離
降っている雨を避けることはできるが、雨を止ませることはできない、というたとえ。
娘の進路は娘の課題。
親の課題ではない。
課題とは、そのことによって最終的に誰が困るのかということ。
“涼しい”親子関係。
課題の分離は対人関係の入口。
自分の人生を生きる勇気は、幸せになる勇気
「人間は自分の運命の主人公である」
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人間の最終的な幸福「共同体感覚」
自分自身の幸福と人類の幸福のためにもっとも貢献するのは共同体感覚である。
人は誰でも幸福になれる。
ではそのために我々は何をすべきなのか。
アドラーがたどり着いた、幸福になる方法に迫る。
「共同体感覚」は対人関係のゴール
人は、弱さ、欠点、限界のためにいつも他者と結びついているのである。
他者を仲間とみなし、そこに自分の居場所があると感じられること=共同体感覚
生きる喜びや幸福は、他者との関係からしか得ることができない。
そのためには、
自己への執着→他者への関心にする必要がある。
人生の意味は、全体への貢献である
全体=他者
共同体感覚=人は全体の一部である。全体とともに生きている
□共同体感覚のために必要なこと
1. 自己受容
ありのままの自分を受け入れる
大切なのは、何が与えられているかではなく、与えられているものをどう使うかだ」
臆病ではなく、慎重。
記憶力が低いではなく、忘却力が高い。
と考える。
2. 他者貢献
自分が何らかの形で“貢献”していると感じられるとき。
3. 他者信頼
他者に貢献するには、他者を仲間だと思わないと信頼できない。
■勇気づけと勇気くじき
幸せになる勇気と嫌われる勇気は一緒。
勇気くじきとは
できないこと、だめなことばかりを指摘する。
理想の子どもや部下をイメージし、現実の相手をそこからの引き算でしか見ない。
勇気づけのためには
勇気を持っている人は、課題に立ち向かっていける気持ちになっている。
そのための援助が勇気づけ。
共同体への貢献感を感じられる
↓
自分に価値があると感じられる
↓
勇気が持てる
この道筋を援助することが、勇気づけ。
キーワードは「ありがとう」
「よくできたね」「偉かったね」という褒めるではなく。
“褒める”とは、上から下に向かって下す評価
“叱る”も同じ。
叱らない、褒めないの根本にある考え方は、
あらゆる対人関係は、対等な横の関係である、ということ。
親と子も、上司と部下も、対等。
「君たちは君たちの人生の主人公なんだから、思い通りに生きればいいんだよ」
自分を嫌う人がいるということは、
自由に生きている証し
「人生の意味は、あなたが自分自身に与えるものだ」
いわゆる一般的な人生の意味なんてものはない。
いい大学に入って、大企業に就職することが成功なんだという考え方は一部の人間にしか当てはまらない価値観。
どんなに困難な状況にあっても、自分の人生の意味は自分で決めることができる。
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感想。
優越コンプレックス
承認欲求
広場恐怖症
あたり、特にぐさりぐさりきました。
注目されたい
多数の中のひとりでありたくない
その人が何をしてくれるかにだけ注目する
まさに。
この行為とかまさに。
まずは、
人生は、生きること全般はギブ&ギブだと思うこと。
第1回目の放送で岸見さんが
「個人の人生はもとより世界が変わる」
って言っていて、
いやいやいや。
すごい大きなこと言いましたねって。
そんなことありえないでしょ。
って思ったのです。
が。
100分終わってみて、
これ、世界変わるんじゃない?
って思いました。結構本気で。
発展途上国の援助とか考えるときに必ず言われること。
「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ」
ということ。
その言葉、考え方って、なにも発展途上国に対する援助だけに当てはまる話じゃなくて、ひとりひとりの人生を考えるときにもあてはまるよなあって。
お金がなくていわゆるホームレス生活を送っている人
人が怖くてひきこもっている人
会社内の関係が嫌で職につかない人
いじめられている人
いじめている人
孤独を感じている人
とか。
いわゆる社会的弱者とかかわいそうな人。
いわゆる社会問題と言われているものの中にいる人。
だれかが手をさしのべてあげないといけない、と思われている人。
そういう人たちがそういう人たちたる理由って、
そういう人たち自身にあるんじゃないかなって、
かなりきびしい言い方かもしれないけれど。
全人類がアドラー心理学を理解して、
自分のものとして、自分の言葉で落とし込むことができたら、
世界変わるかも。
アドラーってすごいなあ。
まだこの番組だけの情報しか入っていないですけど。
それにこの番組の内容も完全に理解したかというとそうでもないですし。
他の著書も読んでみます。