むだなものを愛しつづけられる人間でありたい

たとえば誰かに手紙を書くように、何気ない出来事を綴るとしたら。

新春浅草歌舞伎2018

​毎年恒例となりました。(私の中で)


初歌舞伎が、2015年の新春浅草歌舞伎でした。
それから、はや4回目の新春浅草歌舞伎。
もうこれを観ないと、1年が始まらないような、そんな存在になりつつあります。
本当は、1部2部ともに観たいのです。
が、今年は2部のみ。
来年は、1部2部ともに観ることを目標にします!

 

ということで、2部。

 

その前に、当日券の話。

歌舞伎を観る前に会っていた可愛い後輩ちゃんが、私も歌舞伎観てみたいです!と言ってくれて、当日券を売っている窓口へ行きました。
普段はインターネットで予約するか、たまに歌舞伎通のおばさんに良い席を取ってもらうかしかしないので、当日券を買うということは初めての体験でした。
当日券の販売は、日によるとのことでしたが、この日は何枚か、結構いい席も残っていました。
さらに、当日券のみ販売の席があるという情報を知りました。
花道のすぐ横に、パイプ椅子の席を設けるそうなのです。
「座り心地がちょっと気になる方もいらっしゃるかと思いますが、花道すぐ横なので役者さんの表情もよく見えますし、良い席かと思いますよ」と、窓口のお姉さんがすごく親切に対応してくださいました。
ちなみに料金は1等席と同じです。
可愛い後輩ちゃんは歌舞伎がほぼ初めてで、全体の雰囲気をみたいということで3階の席にしました。
当日券、今度狙ってみます。

 

席の話。

私の席は、今回はちょっと冒険してみました。
花道の左側、裏側といった方がわかりやすいでしょうか。
そこの前から2列目、花道から3席目。
花道の後ろ側になるので、花道の上で見得を切る役者さんの表情は見えませんが、代わりに貴重な後姿を拝める席です。
衣装、よくできてるなあとかまじまじと見られます。
花道に近いので、花道を通る役者さんの表情はよく見えました。こちらに向かって歩いてくる表情、きりりとしていてかっこよかったです。迫力はありました。
それから、舞台が斜めから見えるので、黒子の動きとかよく見えました。
ふだんとは少し違った視点から見られたことは愉しかったです。
ただ、舞台中央との間に花道があるので、中央部や下の方の動きなどは少し観にくかったです。
そんな席でした。

 

恒例のお正月挨拶は、巳之助さんでした。
まあ巳之助さんの挨拶の日を選んだのですが。
たくさん笑いました。
素敵な役者さんです。

 

さて、演目の話。

第2部の演目は以下の3つでした。

一、操り三番叟 (あやつりさんばんそう)
二、双蝶々曲輪日記 引窓 (ふたつちょうちょうくるわにっき ひきまど)
三、銘作左小刀 京人形 (めいさくひだりこがたな きょうにんぎょう)

 

一、操り三番叟 (あやつりさんばんそう)
操り人形が三番叟という踊りを踊るという演目で、操り人形役の役者さんの人形らしい動きと、その操り人形を操る人が実際に糸でつって動かしているような、息の合った動きが面白い演目です。華やかな演目です。

最初に、翁(中村錦之助)と千歳(中村隼人)による舞から始まるのですが、その舞が厳かでいて華やかで、新春らしくて良かったです。
舞が終わると、操り人形を操る役の後見(中村梅丸)が出てきて、操り人形(中村種之助)を箱から出し、操り始めます。本当に糸に引かれているかのような動きと、人形らしい動きと、すごく面白かったです。稽古大変なんだろうなあ。良かったです!


二、双蝶々曲輪日記 引窓 (ふたつちょうちょうくるわにっき ひきまど)
家族の思い思いの義理と葛藤が描かれた人間ドラマです。

双蝶々曲輪日記 引窓の前の場面を描いた「角力場(すもうば)」という演目が昨年(2017)の新春浅草歌舞伎の演目にあり、観ていたので内容などは理解しやすかったです。

〇あらすじなど

主な登場人物は、
南与兵衛(なんよへえ)のちに南方十次兵衛(なんぽうじゅうじべえ):中村歌昇
女房お早:中村米吉
濡髪長五郎:尾上松也
母お幸:中村歌女之丞
平岡丹平:坂東巳之助
三原伝造:中村隼人

色々あって濡髪は、平岡と三原の兄弟を殺めてしまう。
濡髪は罪の重さを理解しつつ、最後に一目だけでも、実の母に会いたいと願い、母お幸の元へ向かう。
一方、母お幸には義理の息子である南与兵衛がおり、彼の元に平岡と三原から濡髪を捕らえてほしいとの依頼があった。
そのことを知る由もない濡髪は母の元を訪ね、再会を喜び合う。
女房お早も濡髪とは知り合いであり、共に喜び合う。
そんな中、南与兵衛が帰宅する。
濡髪が母の実の息子だとは知らない与兵衛は、母と女房に濡髪の件を伝える。
葛藤する母と女房。
はたして濡髪はいかに。


〇感想

人を殺してしまった実の息子(濡髪長五郎)と、その濡髪を捕らえることを命じられた義理の息子(南与兵衛)の間で葛藤する母お幸。
真実を知り、母の気持ちに応えようとする息子。
家族愛とはまさにこのこと!という感じですね。

濡髪はあくまで人殺し、犯罪者です。
けれども、この場面では、最後は逃げます。母たちが逃がします。
義理の息子である与兵衛も、自分の出世より濡髪を逃がすこと、つまり母の気持ちを重んじることを選びます。
勧善懲悪ではないところが、すごくいいです。

米吉さん女役素敵でした。
声がよかったです。
女らしくもあり、でもか弱い感じではなくたくましくもあり、色々な人生経験をつんできたんだろうなあという印象でした。お早は元々遊女なので、その部分が伝わってきました。
あんな女性になりたいですね。憧れ。


さて、最後の演目
三、銘作左小刀 京人形 (めいさくひだりこがたな きょうにんぎょう)
彫物師がつくった人形が、実際に動き出してしまうというお話です。

〇あらすじ

彫物師甚五郎(坂東巳之助)はかつて京で見た小車太夫のことが忘れられず、そっくりな人形を作ってしまう。そしてその人形を相手にお酒を飲み始める。
すると、なんと人形(坂東新悟)が動き出す。
甚五郎が魂を込めて彫ったため、その魂が乗り移って動き出した様子。しかし、甚五郎の魂が乗り移ったため、動きが男らしい。
そこで甚五郎は、以前拾った小車太夫の鏡を人形の懐に入れる。
すると人形は女性らしい動きをする。


〇感想

楽しい演目でした。
人形やロボットに感情が生まれて実際に動き出す、というお話は、昔からあったんですね。
今も昔も、人の考えることはあまり変わっていないのだな、面白いな、と思いました。

新悟さんの美しさ。ため息ものです、ほんと。
彫物師が男性であったため人形の魂が男性のままで、動き出した最初は男性のような動きで、しかし鏡が懐に入るとたちまち女性らしい動きに変わり、その変化が面白かったです。

なにより、人形とはいえ好きな女性と一緒に踊れるということへの嬉しい気持ちが全面に表れている甚五郎の表情が、今でも思い出すとにやけてしまうくらい、楽しそうでした。

後半の彫物師甚五郎の立ち回りもしなやかで、甚五郎はきっと腕はものすごく良い彫物師なのだけれども、そのことを少しも鼻にかけない謙虚さを持った人なのだろうなあと、見ながらそう感じました。
甚五郎のことが好きになりました。

それにしても最後の梅丸くん、可愛かったなあ。

あれ終わっちゃった、と思うくらい、ずっと観ていたい演目でした。

 

ちなみに、左甚五郎は実在した彫物師で、有名なのは日光東照宮の眠り猫や三猿。
それから京都にある石清水八幡宮の「目抜きの猿」。
これ、右目に釘が刺さっているのです…。痛そう。
なぜかというと、釘は最初は刺さっていなかったそうなのですが、あるとき石清水八幡宮の境内に猿が現れ夜な夜な悪さをしていたそうなのです。
その猿というのが、左甚五郎が彫った猿の彫刻で、精巧に出来過ぎていたために魂が宿ったのだということになり、その猿の彫刻の目に釘を刺したところ、それから猿が現れなくなった、というお話があるそうで。
左甚五郎は江戸初期あたり(戦国末期あたりとも)の人物のようで、この歌舞伎の演目ができたのが1860年、江戸後半です。
詳しい話は調べていないのでわかりませんが、きっとなにかつながりがありそうな、面白い話です。

 

来年も楽しみです。